欠点であるのか個性であるのか

 

椅子の製作に関わらず
木の加工業者には避けられないことがおこります。

 

節や染み、割れといった欠点をどう処理するのかという問題です。

 

木取りの段階で目視出来る欠点は当然避けて作業を進めますが
まれに厚みを削る行程でわずかな節の痕跡や
入り皮(木が成長の過程で樹皮を巻き込んでしまうこと)が
ひょっこり顔を出す事があります。

 

以下サンプルの画像を挙げます。

 

※テストーピースなのであえてこの様に木取りしています。通常御法度!

 

最下段の画像以外はすべて加工を進める道中で
表面に出て来た節などです。

 

3段目の画像はすでに完成品になっていますので
この節の痕跡はOK!と判断したということなのですが
ではどういう基準で可と不可を判断しているのか?
をご説明しなければなりません。

 

まず「割れ」については有無を言わさずに不可です。
直接強度に影響しますので安全性を考えれば
妥協の余地はありません。

 

「入り皮」も割れと同じく不可です。
入り皮の周囲は腐っている事も多く
これも安全性を考えれば不可です。

 

一番判断が難しいのが「節」です。
節には色々と種類があって、ここでは深く言及しませんが
「生節」「死節」「葉節」など節の性質で分けられます。

 

大雑把に言うと節を持っている材は
無地の材と比較すると強いのです。
ですが節周辺は木の癖が最も強く出る部分でもあります。

 

仕口の部分で大きく狂いがでると椅子の形が狂うばかりか
安全性におおきな問題が出ますので
仕口や継手に干渉する木取りは不可となります。

 

それ以外の全く構造に影響のない場所に出る節は
製作者の判断によって変わってくる大きなポイントになります。

 

うちでは品物(椅子やテーブル、箱物も含む)の全体をパッと見た時に
真っ先に目線が向かう大きさや位置に節があればそれはやはり不可になります。
(大きな節をテーブルトップに意匠として残す品物もよく目にします。
しかし作り手としてはあまり目玉のような大きな節を
あえて残すようなデザインはとても勇気がいります・・・。)

 

椅子で言えば足下に近い裏側や、不自然ではない葉節であれば
すべて許容しています。

 

今回のサンプル画像で言えば

1段目の画像 「可」
仕口から離れた下部で目立たない。
強度は全く問題ない。

 

2段目の画像 「保留」
白系の木地なので若干目立つ。
強度は全く問題なし。

 

3段目の画像 「可」
葉節の名残で全体を捉えた時に気にならない。
環孔材なので目立ち難い。強度に問題なし。

 

4段目の画像 「不可」
死節に近い状態でいずれポロッと外れる可能性。
仕口にかかっていて強度に難有り。

 

この辺りの判断は本当に人によって
また何に価値基準を置くかで全く違ってきます。
タイトル通り、それを欠点とするのか?
それとも個性だとするのか?難しい判断です。

 

木本来は節のないことの方が不自然で
様々な個性があるからこそ天然素材だと言えなくもありません。

 

今のご時世、材料の山の中から
欠点のない部分を贅沢に木取りするなんてことは
なかなか出来る事ではありません。

 

かつての欠点と言う個性を
どう使いこなすのか?作り手が直面する大きな課題です。