椅子の背板(曲げの加工について)

 

ここのところ偶然にも椅子の背板の曲げはどうやって?
というご質問を立て続けに頂きましたので
簡単にご説明したいと思います。

 

曲木とは高温で蒸した木を短時間で一気に曲げて型に固定。
一定の期間養生し任意の曲率に曲げると言うのが一般的です。
※このあたりはググってもらうと沢山サンプルが出てきます。

 

この「蒸し曲げ」とは別な方法で木を曲げる事が出来ます。
「積層曲げ」または「ラミネート」と呼ばれる手法です。

 

当工房では主にこの「ラミネート」で
椅子の背板などの曲げ加工を行っています。

 

「積層曲げ」は「蒸し曲げ」と比較すると
材の表面を荒らす(蒸気で毛羽立つ)ことがないので
加工後の処理の手間が少なくて済み
また曲げ戻りの影響も少ないと言うメリットがあります。

 

曲げたい曲率によって違うのですが
約3〜5mmの薄板を用意します。

中央に見える黒い三角は重ねる順番をマークしたもの。

このように一枚の板をスライスした順番通りに接着することで
仕上がり後も積層の境界がわかりにくくなります。

厚さ3mm。
木目の様子で一枚の板からスライスしたことがわかります。

R400で成形する型。
かなり使い込んで少々くたびれています(笑)。

接着剤を塗布したら出来る限り短時間で型にセット。
一気にクランプ(締め具)します。
中央に三角マークが見えます。

画像はシュミレーションですが
実際には8本の大型クランプで最低でも48時間は圧締します。

型から外すとこの様に任意の曲率で固まります。
※先程のサンプルとは材が違いますが仕上がりは同じです。

4枚で12mm。

 

この後任意の寸法にカットしサンディングを施せば
スライスの境界もほとんど見分けがつかなくなります。

 

小ロットであまり幅の広くない曲板うを作るには
とても合理的な方法です。