テーブルが先か?椅子が先か?差尺の話


先日椅子の脚のカットについて投稿しましたが
思った以上に、というよりも今までで一番に
あちらこちらでご意見を頂きました。

なかなか難しいテーマではあるので
答えのあることでは無いのですが
より考えを深めた方が良いこと
なんで?という疑問を
今後も率直に発信できればと思います。

椅子製作を受注する前には工房で採寸などします。
椅子の高さは5mm、10mmの薄板を重ねたりして
比較的簡単に調整出来ますが
テーブルの高さは、なかなかシュミレーションが難しい課題でした。

椅子の座面高について偉そうに(笑)書いたので時間を作り
テーブルトップのシュミレーターを作ってみました。

任意の位置に止まって容易に調整が出来る。
少々試作然としていますが十分使えます

さてテーブルの高さ。
それが今回のテーマです。

椅子の座面高はとても重要という話は先日の通りで
これが合わなければ話のスタートにも立てないのですが
この座面高だけを注視していると
とんでもない見落としをしてしまうのです。

タイトルの「差尺」という言葉
一般の方には聞き覚えのない言葉だろうと思います。
これは椅子の座面の高さと
テーブルやデスクの天面までの寸法差を言います。

この差尺。
とても重要な寸法でこれが合わないと
日常生活にかなりの支障をきたします。

これまで一般的には
差尺30cmと言われていました。

座面高40cmに対してテーブルトップは70cm。

実際この寸法がベースになって
販売されているテーブルは数多く見受けられます。

この差尺30cmという寸法。
実際に体感してみるとテーブルトップが少し高いと感じます。
これまで関わってきたテーブル製作の経験と
自分自身の感覚を基準に考えるならば
26cm~28cm辺りが最も使いやすいと思われます。

ではテーブル高さは68cmで決まり。

そう簡単にはいきません(笑)。

テーブルは当然ですが家族で共有します。
夫婦2人であっても身長の違う男女が
同じテーブルで食事を摂る訳です。

男女間の身長差を考慮して
椅子の座面高を各自に合わせると
5cm程度の差は当たり前に発生します。
座面の高さで5cmの差があるというこは
テーブルトップにも5cmの差が生じるということになります。

極端な例です。
奥様身長150cmで座面高39cm。
旦那様身長180cmで座面高44cm。

仮にこんなご夫婦があったとして
テーブルトップをどうするのか?という問題です。

差尺28cmとして
旦那様に合わせればテーブル高72cm。
奥様に合わせれば67cm。

単純に中間寸法の69.5cmにすれば夫婦円満?(笑)。
そうならば楽なのですが。

身長の低い奥様が69.5cmのテーブルで食事をするのは
かなり負担になると考えられます。
多くの場合身長の高い側のご主人が
低いテーブルで食事を摂る方が負担が少ない。

これは日本人の食事のスタイルが
茶碗を手に持って食べることにも関係があります。

テーブルトップの妥協点を探さねばなりません。

69.5cmなのか?
68cmなのか。

この辺りは実際にその高さのテーブルを使って
初めて直感的に理解出来ます。
理論上の寸法はあくまでも基準であって
実際の正解は体感しないとわかりづらい。

そしてテーブルの高さでどうしても折り合いがつかない場合
再度椅子の座面高を検証してみる。
椅子の座面をあと少し上げる。もしくは下げる。
わずか5mm程度の微調整を繰り返して
最適解を探し出します。

つらつらと書き綴ってますが
これにテーブルデザインによっては
天板下に幕板と呼ばれる部材があるので
太ももとの接触があればまた条件が変わってきます。

デスクで作業する場合もまた少し条件がかわりますので
それもまたシュミレーションの必要があります。

本当、テーブル一つで面倒な話です(笑)。

ここまで来るとご理解いただけると思いますが
まずテーブルを購入して椅子を選ぶというのが
とても矛盾することだとわかります。

まず椅子を決める。
その後にテーブルを決める。

製作側からすると、この順番を強くお勧めします。

テーブルならば購入後にサイズの調整のために
脚のカットは可能(デザインによっては無理なケースも)です。

もし新築やリノベーションなどで
作り付けのカウンターやデスクなどお考えの場合
設計者に事前にリクエストをしておかないと
竣工後に使い難いとわかっても
手の打ちようがないということも起こりかねませんので
施工前にご一考を。