新しい試作と2019年の振り返り


あっという間の年の瀬。
今年も色々なことに関わらせて頂いた1年。
いつもご協力頂いている
皆様本当にありがとうございます。

椅子の製作のみならず
変わり種の製作依頼が増えていて
作り手としても
楽しみながらの作業が増えているのが
ここ数年の特徴かなと思っています。

2019年の締めくくりは
Wide Work Chairを数脚製作。
ご夫婦でサイズを分けてというご依頼が
偶然にも2家族続きました。

家族の生活のシーンに10年20年。
場合によるとそれ以上の長い期間を
御一緒させて頂けることは
この仕事の喜びである反面、とても大きな責任を感じます。

※ご夫婦で55mmの高さの差です

Wide Work Chairも
見えない部分を少しづつ改良して
より良いものへ進化していますので
製作ご依頼お待ちしております(笑)。

さてそんな椅子製作と並行して
現在進行中「たためる円卓」プロジェクト。

西宮の「マスタープラン一級建築士事務所
建築家小谷和也さんのデザイン・設計で
文字通りたためて持ち運べる
丸テーブルを試作製作中です。

※Φ1000の円形

実はこのプロジェクト。
2年ほど前にスタートして
しばらく期間が空いたのです。
やはりたたむということが強度と
相容れない面があります。
特に幕板と脚をどうたたむのか?
が非常にハードルが高い課題でした。

しかし今回は
前回のモックアップと比べると
脚のたたみ方そのものが
全く違う方法になっています。

小谷さんの発想はユニークで合理的です。

一般的には
「テーブルをたたんで持ち運ぶ必要ある?」
という疑問が湧きます。

例えば年に数回
自宅にゲストを多数招く時に
もう一つテーブルが必要になるとか
どこか自宅以外に場所を移しての
打ち合わせやイベントに
持ち運びが出来て尚且つ
デザイン的にも一定以上の
クオリティのテーブルが欲しい時
そんな時に使える円卓をというのが
大きなコンセプト。

この円卓の最大の特徴がテーブルとしてはもちろん
座卓としても使用できるという点です。

※外した脚の収納が特徴的



最大の特徴は製作の最大の難所でもありますが(笑)。

※テーブルとして使用時
※緩めて脱着

見た目には一枚の天板に見えますが
実は5枚の板で折りたためるのです。

こうして1枚に見えるのもユニークで
合理的な脚と幕板の動きによります。

さらに
持ち運ぶのに重さがとても重要になってきます。
広葉樹でテーブル向きの材と言えば
「オーク」系の材料が浮かびますが
重量を考えると難しい。

そこで候補に上がったのが「栗」材。
大阪の阿波座「橘商店」さんへ。

栗自体、市場の流通量が少なくて
ほとんど安定的に手に入れるのは
難しいと思っていました。
もちろん貴重な樹種ではありますが
栗をメインに扱う材木屋さんが
しかも大阪にあるとは嬉しい驚きでした。

おかげで天板は共木。
脚も綺麗な無地の角材を分けて頂いて
「ほんまにこれ試作なの?」
と言われかねないほど
贅沢な(笑)試作品が仕上がりました。

小谷さんの建築やリノベーションは
国産材を惜しみなく使うというのが
一つの特徴なので
今回の円卓プロジェクトも期せずして

「日本の建築家が日本の家具工房で国産材を用いて作る。」

ということになりました。

かなり完成度の高い試作です。
「栗」の質感が想像以上に良く
軽さと強さのバランスも良いです。

小谷さん自身がミッドセンチュリーの
北欧椅子を多く所有されているので
そんな椅子とのバランスもとても
良いデザインになっています。

特にウェグナーの椅子は
丸テーブルとの相性がとても良いと思います。

もちろんまだ改良しなければならない点は
多く見受けられますが
商品化の目処はたったのではと感じています。

年が明けた2020年に
小谷さんが手掛けた関東方面の住宅での
オープンハウスでお披露目の予定だそうです。

さてさて2020年はどのような出会いがあって
どのような仕事に関わらせて頂けるのか楽しみです。
ユニークなお仕事のご依頼心よりお待ちしております。

それでは皆様良いお年を!