Wide Work Chair 新しいデザインと課題

以前投稿した「Wide Work Chair」のカスタムメイド。
それに引き続きデザインの変更を加えた新しい「Wide Work Chair」を製作しました。

大きな変更は後脚のデザイン。曲線を取り込んでいます。
各部材の太さ・ディテールもすべてわずかながらの修正を加えています。

wwc2005.1

「Wide Work Chair」のデザインはこれで一応の完成と考えています。
今回ご依頼頂いた椅子は2脚。御夫婦でお使いになるとのこと。
工房までお越し頂き採寸。背の位置・座の高さ・奥行き
各々に会わせて尚かつデザインとしてまとめるという課題がありました。

wwc2015.2

椅子のデザインはすべての部材が複雑な角度で絡み合っているので
単純なサイズ変更もかなりの変更点が現れます。
そんなハードルもなんとかクリアし無事納品となりました。

材はヨーロッパビーチ。
今回手配した材は非常に目の細かく木肌の美しい材でした。
市場での人気はウォールナット、チェリーなどには劣りますが
材の性質、木肌など椅子に用いるのには最上の材だと思います。

張り地はリバコ社のNCシリーズ。
ウールが含まれるその張り地は視覚的な質感の良さと
コストパフォーマンスに優れた椅子生地です。

無事にお届けが完了しホッとしたのも束の間
お客様から非常に重要なご指摘がありました。

「この時期長時間座ると、太ももの裏が蒸れる感覚がある。」

正直な所、全く思っても見なかったご指摘でした。
お客様は終日椅子に座ってPCに向かうことが日常の方で
椅子に求める感覚が非常に研ぎすまされています。

理想の座の高さはまんべんなく体重が太もも裏に分散されることなのですが
座と太ももの接触面が増える程「蒸れ」を感じるという大きな課題。
加えてウールという素材の持つ特徴の問題。

椅子は家具よりも洋服に近い生活用具だと看板を掲げている以上
この肌に触れる触感の問題は今後の研究の余地がある大きな宿題です。

ちなみにお客様が日頃お使いの椅子はW社の事務作業用椅子。
人間工学的に優れているのみならず
座はメッシュ素材で十分な通気性が確保されています。

工房という規模で椅子を製作する以上
研究開発という分野ではメーカーに及びませんが
経験と知恵を駆使してこの課題をクリアしたいと考えています。

wwc2015.3

こうして見ると初期モデルとの違いがよくわかります。